更新日:2010年5月15日 |
科学の夢 |
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今回は科学についての夢を書く。私が望む発明の第一は、核兵器を電気エネルギーに転換する技術である。
核兵器は、過去にたったの二度、いずれも日本で使用された。人間が惹き起こした史上最悪の愚挙である。目的が戦争の防止であれ報復であれ何であれ、二度と核兵器は使用してはならない。そのことは、人間を愛する人々であれば、わかっていると思う。なのに、何という核兵器の数の多さか。
これらの核兵器を、しかし、気楽に海に捨てられても困る。これを電気エネルギーに転換する科学技術を発明してもらえないものか。私は、科学のことはまるで判らない人間であるが、核をつくり出す能力があるなら、これを転用するくらいの智恵は、出て来るに違いないと思う。
そういう技術が開発できれば、核兵器保有の先進諸国は、核兵器をエネルギー資源として、アフリカなどの発展途上国にどんどん寄贈してほしい。発展途上国の発展は世界経済の進展と世界平和の確立に大いに貢献する。自国と全人類に幸せをもたらすのである。
同じような願いをもって、ピストルなどの通常兵器も、他に転用して高価な経済価値を生むような技術がほしい。非常に高く売れるとなれば、これを私的に所有している人々も、手放すのではないか。
たとえば上空から広範囲に圧力を加えることによって、地中に埋められたまま放置されている地雷のすべてが、一挙に爆発して消滅するような技術が発明できないだろうか。地雷を踏んで身体の一部を失った子どもたちの写真は、辛くて見ていられない。人間の罪深さに悪感がする。
二つめの夢は、2年前にこの欄で書いた。「太陽熱、風力だけでなく、あらゆる自然エネルギーの活用を考案してほしい。川の流れも、ダムのような巨大な装置を小さなものに工夫し、同じように海の波や降雨まで活用するくらいの智恵は出ないものであろうか。」無智なままにそう書いたが、その後、海の波からの発電の試みがなされていることを知った。それなら、大は地震のエネルギーから小は走る車の振動まで、すべてを吸収して発電に結び付ける敏感な装置の発明にも取り組んでもらえないものか。それらを大量に蓄える小型電池の発明と相まって、世界中の国を豊かにするであろう。
三つめの夢は、人間科学についてである。人間の感情の力を解明してほしい。脳科学でも生理学でも医学でも心理学でも教育学でも、どの分野でもよい。できれば関係する分野の科学者が複雑系の手法で協力して取り組み、「情」の力を明らかにして、そのコントロールを進めてほしいのである。憎しみや怒り、嫌悪といったマイナスの感情は、もはや野生動物のような自己保身の必要性は乏しくなったのであるから、自然の進化を待つまでもなく、早く減少させるように、科学の力で対策を考案できないだろうか。
そうすれば、戦争や民族紛争などの悲惨事はなくなり、日常生活上の無駄な争いもずっと少なくなるであろう。
そこまでの人間改革でなくても「情」の力がわかってくれば、働く意欲、学ぶ意欲など、生きる力を増強する方法も解明されるであろうし、人間関係のストレスを和らげる方法も、自覚されてくるであろう。こころがどこから生まれるのかが論じられているが、感情の持つ機能については、科学的取り組みが少ないように感じている。誰もが幼いころから日々体験している感情の動きだから、かえって研究が進まないのであろうか。しかし、誰もが知っているとおり、感情の力は大きい。憎いとなったら、やってはいけないとわかっていても争ってしまったりする。人間科学は、理性を信頼し過ぎではなかろうか。 |
(電気新聞「ウェーブ」2010年4月22日掲載) |
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