更新日:2009年10月14日 |
家族の絆を深める家
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天窓の青空、差し込む日の光のやすらぎ。台所と洗濯機と物干しとお風呂とトイレが一列につながり、だから、お料理と洗濯と子どものお風呂の見守りが一度に出来る。幼い子どもがどこで何をしているかがいつもわかり、子どもからすれば、何をしていても親の姿がどこかに見える。
そんな家が、あればいいと思いませんか。
お風呂とトイレがつながっているから、認知症の祖母の下の世話が一手間で済む。
親は、二階の隠れ部屋のベッドに、疲れた身をしばし横たえることができる。窓から見える比叡の山。部屋の空間は、吹き抜けを通して階下につながっているから、階下で遊ぶ子どもたちの気配が伝わる。
家族が、それぞれのことをしながら、いつもつながっている家。
自然の素材ででき、風と光が通り抜ける家。
それが、京都の岩倉に、宇津阜代さんがつくり上げた、つながりの家である。
三人の子育てをし、夫の建築業を手伝い、介護もした彼女は、男のつくる家にどうしても納得できなかった。暮らすのに、なぜこんなに不便なのか。そして、なぜこんなにばらばらに暮らすようにできているのか。疑問に答えるため、広く学んだ経験が、働きざかりの夫の死を越えて、世の中に生かされることになる。彼女は、「住まいで家族の絆が深まる」という思いを人々に伝える伝道師となり、NPO「次世代の家と社会をつくる会」を設立した。
「抱きしめるだけで愛は伝わる」とは、彼女と娘友見さんの著「大丈夫だよ、お母さん」(いろは出版)の中の言葉である。暖かく育てた娘二人は、彼女の会社ミセスリビング(TEL075‐705‐0707)の共同代表となっている。家を見学にきた女性たちは、「これこそ私の欲しかった家」と言って涙をこぼすそうである。よくわかる。
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(京都新聞コラム「暖流」2009年9月27日掲載) |
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