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提言 生き方・その他
更新日:2009年7月8日

歌って元気に

 「自分を解放する」。これが元気の素(もと)らしい。
 たとえば、歌。すべてを忘れて、腹の底から声を出す。自分の声に酔いしれる。
 たとえば、田部井淳子さん。世界の最高峰エベレストに女性として初めて登頂した高名な登山家である。大きな荷物を背に黙々と進む日焼けした田部井さんが、金キラキンの透けるドレスで舞台に登場、何百人の聴集を前にシャンソン「幸福を売る男」を軽快に歌う。
 その姿を、吉永みち子さんが、「怖いもの知らずの女たち」(山と渓谷社、本年出版)に楽しく描いている。
 田部井さんと歌う女性仲間は6名、アラ還(おおむね還暦)からアラ古稀である。その集いは、6年前、田部井さんが、「私、シャンソンを習ってみたい」とつぶやいたことから始まったという。それまでシャンソンなど縁がなかった女性たちが、「面白そう」というので習い出し、習えば人に披露したくなり、2年後には、もうコンサートを開いている。歌う女性たちは会社のバリバリの幹部だった人や現経営者、元検事など多彩な経歴ながら、歌はノンプロ。しかしながら、衣装は、「開ける、透ける、光る」のプロ並み。蛇足ながら、開けるのは、胸元である。
 それだけ自分を解放すれば、元気になるのは当たり前である。下手なリハビリよりずっと介護予防になるであろう。
 私事ながら、妻も、もう40年ほどコーラスを続けていて、今も仲間たちと一泊旅行に出かけたり、楽しんでいる。
 幸い、衣装は「開かず、透けず、光らず」で、経済的負担は全くない。
 発表会が近づくと、風呂場からドイツ語か何かの大きな歌声が響いてくるが、これはつれあいの健康のためだから我慢するほかない。 
 発表会でもないのに歌声が響く時は、ストレス発散である。その原因が私にある時もあるが、3曲ほどでストレスは消え去るらしい。歌とは有り難いものである。
(京都新聞コラム「暖流」2009年6月14日掲載)
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