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提言 生き方・その他

更新日:2011年2月11日

自立には
「ビッグイシュ—」という情報誌を買われたことがありますか?生活に行き詰った方々の自立を支援する情報誌。内容は、世界の大ニュースを報じるもので、300円。これを売ったお金で、生活を立て直していく。
 東京の山手線各駅で、週日の早朝、つじ立ちを続けていると、ビッグイシューを売っている方とかち合うことが多い。
 こちらは拡声器を使って、通勤客を対象に、名刺両面大作戦を訴える。名刺両面大作戦というのは、サラリーマンにボランティア参加をすすめる作戦で、名刺の裏に、応援するボランティア団体やNPO団体などの名前を書きましょうという運動である。
 マイクを握っていると、昨年の6月、7月には参議院議員選挙の候補者たちと、また、今は地方議会議員選挙の候補者と、かち合う。それには負けずに、
 「政治にまかせず、行政に頼らず、私たちの暮らす街は、私たちの力で、温かい絆のある街に変えましょう」などと訴える。しかし、ビッグイシューを売る方には、申し訳なく思う。彼らは、マイクもなく、一人で頑張っているからである。
 だから、時々は、ビッグイシューの宣伝を織り交ぜる。
 ある駅でかち合った方は、歯がゆかった。高齢の男性だが慣れないとみえて、声が出ないどころか、路上に並べた情報誌の後ろで、立ちすくんでいるばかりである。
 『そのままではいつまでたってもお金は入って来ないよ』返品がきかないと聞いているから、たまりかねて隣に立ち購入を呼びかけてみたが、そう簡単には買ってくれない。
 その点、目白駅の男性の方は、しっかりと情報誌をふり上げ、礼儀正しく呼びかけておられた。私がつじ立ちしている1時間の間にも、数名の方が買って行かれる。支援者なのであろう、比較的若い女性が多い。
 『自立するには、やっぱり気力が第一なんだ』と痛感した。

 京都新聞「暖流」2011年1月16日掲載 

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