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提言 生き方・その他

更新日:2011年7月28日

幸せになる力
 人には「生気」がある。生気の強い人は眼が輝いており、話もいきいきとしている。やる気があって、仕事もよくでき、しかも、うちとけやすい。
 そういう人は、たいてい仕事以外に楽しみを持っている。それに人を喜ばすのが好きだから、ボランティア活動の一つや二つ、やっていたりする。
 私は、2年ほど前から、そういう、いってみれば仕事の裏でやっている活動を名刺の裏に印刷しましょう、という運動をやっている。私の「さわやか福祉財団」では、これを「名刺両面大作戦」と名付けている。
 きっかけは、バリバリの現役のある局長さんから、名刺の裏に「〇〇動物園ボランティア」と印刷した名刺を貰ったことである。「エッ、これ、どんなことをされているんですか」と思わず聞くと、「子どもたちにいろんな動物の説明をしているんですよ」。そう答えた途端に、それまでいかめしかった仕事の顔が、動物と子どもが大好きなオッサンの笑顔に変わった。一挙に好感を覚えながら、「ゴリラもこわがるような元の顔が、こんなに親しみのある顔に変るんだ」と、心の中で感心していた。
 20年間ボランティアを広める活動をしてきたわが財団が、いまだにもてあましているのがサラリーマンである。「そうだ、名刺の裏に、関係しているボランティア活動や地域活動を印刷する運動をしよう。そういう文化が広がったら、何も印刷していない人は恥ずかしくなるだろう」。そういう狙いで始めてみると、面白い。
 ある大企業の幹部の名刺の裏をみると、「なるほど、環境保護のボランティアはわかるけど、あなたが子育て支援。子どもがこわがりませんかねぇ」と、口にしないが正直な感想。 内閣府政策統括官付参事官、といかめしい肩書の美人幹部公務員が、裏に「病児保育・病後児保育のNPO法人フローレンス サポート隊員」。なるほど、なるほど。
 裏に印刷できる活動をしておられる方々は、例外なく、人間としての魅力にあふれ、仕事の方でもきわめて優秀である。「健康」誌だから特筆すれば、身体も心もお元気である。
 これは、もっと力を入れて運動を広めなければと考え、昨年(2010年)の6月1日から、山手線各駅、早朝辻立ちを始めた。朝7時45分から1時間、サラリーマンたちがどっと駅から出てくる時間帯、駅前広場に「名刺両面大作戦」ののぼりを立て、私はマイクで訴え、わが財団内外のボランティアが広報のチラシを配るのである。
 街頭で訴えるなど初めての経験で、1年近く経っても自分の名前は恥ずかしくて言えないが、月曜から金曜まで毎日続けてくると、いろいろと発見がある。まず、東京の男性サラリーマンは、心が疲れている。出張した際、横手市や那覇市などでもやったが、ほとんどの人が興味を持ってチラシを受け取ってくれた。ところが、東京では、ほとんどのサラリーマンが受け取ってくれない。いや、見てもくれない。見てくれるのは、子どもたち。次いで、女性は年齢を問わず、そこそこの興味を示してくれる。高齢の男性も。しかし、中年のオジサンたちは、眼を上げない。
 今年の3月11日、東日本大震災以降は、救援資金の街頭募金に切り替えたが、やはり、寄付してくれるのは子どもたち、女性、年輩の男性。そして、時々、中年サラリーマン。 人生、心が疲れていては、人を幸せにする力どころか、幸せになる力も出てこないのではなかろうか。

((株)アグレプランニング発行 季刊「健康」2011夏号掲載)  

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2011年5月12日 義援金とサラリーマン
2011年5月12日 おばさん賛歌
2011年3月24日 好きなように
2011年2月20日 定年は社会貢献への入り口
2011年2月20日 ヒミツの愛好番組
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