更新日:2012年1月18日
車好きのミステリィ
友人に、裁判官をしていた車好きがいる。奥さんに頭が上がらず、
「妻が私をほめてくれるのは、運転だけだ」と、長らく公言してきた。「奥さんは自分で運転しないから、彼の運転でもうまいと思うんだろう」というのは、私のひそかな解釈であった。
ところが、彼が五十代になった頃であったか、「どうも、妻がこのごろ私の運転を下手だというんだ」と、うかぬ顔をしている。「ははぁ、奥さんは運転を始めたんだな」と聞くと「いや、そうじゃない」。
ではなぜ彼女の見解が変わったのか。
彼らに子どもはいないから、子どもの助手席に乗ることによって見方が変わるということはありえない。では、なぜか。
彼にも、私にもミステリィである。
* * *
昔、息子に言われたことがある。
「車の助手席にナガーイ髪の毛が落ちていたよ。母さんが気付かないように捨てておいたからね」
「え?え?え?」ナガーイ髪の毛のひとを助手席に乗せた覚えは、マッタクない。エンザイである。しかし、この車を運転するのは私か妻であり、私たちには娘はいない。
あの髪はどこから来たのか。息子に恩を売られたままなのがシャクである。
* * *
若かったころ、ワシントンDCで、外交官務めをした。車は、外交官ナンバーである。
ある時、日本からの来客を助手席に乗せ、ニューヨークに向けて高速道路をとばしていた。シボレーは勝手にスピードが出る困った車で、片側5車線の広い道路、ついうっかりしてサイレンを鳴らして走るパトカーを追い抜いた。
ところが、そのパトカー、私の車の方に寄ってきて、私の車を止めるではないか。スピード違反を注意されて、もちろん大反省。
しかし、ミステリィ。「あのパトカー、サイレンを鳴らしてどこへ行くつもりだったのか?」
(公益財団法人交通道徳協会「明るい旅」2012年1月1日発行289号掲載)
[日付は更新日]
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