更新日:2008年3月25日 |
タテワリ |
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ある小学校の6年生に、「あなたの小学校の良いところは?」というアンケートをしたら、群を抜いて多かった答えが、「タテワリのあるところ」というものだった。
年長の子どもが、同じ町内の年少の子どもを担当し、登下校や学校での掃除などの活動の面倒を見る仕組みである。「タテワリがあるから、全校みんなが仲良しになる」というのが、子どもたちのお気に入りの理由である。
先生や保護者に聞くと、年少の子どもの面倒を見ることで、年長の子どもは人間的に大きく成長するという。「人の気持ちを察する子になった」「がまんできるようになった」「わかりやすく話せるようになった」など、喜びの感想が出てくる。
年少の子どもたちも、お兄さん、お姉さんを得たようなもので、その影響力、教育力は、親以上のものがあるらしい。
過日、文部科学副大臣の池坊保子さん主催の有識者会議で、タテワリの話をしたら、彼女もよく知っていて、その教育効果が大きいことに同感の意を表した。そこで、私はつい、
「文部科学省がしていないやり方が、いちばん教育効果が大きいのかもしれませんね」と余計なことを言ったが、居並ぶ同省の高級官僚は無反応であった。
去る1月には、わがさわやか福祉財団の主催で、「子どもと交わろうプロジェクト・東京フォーラム」を開催したが、そこでも異年齢の子どもたちの交わりによる教育効果の大きさが証明された。
紹介された多くの事例の中に、地域の大人が、子どもたちをハイキングに連れて行くプログラムがあった。これに参加した年長の小学生が、ハイキングの魅力にとりつかれ、将来はハイカーの国際資格を取りたいというので、英語と仏語の勉強も続けているという。母親に聞くと、「もともと人と交わるのが苦手で、家に引っ込みがちだった子が、ハイキングを始めてからはどんどん外に出るようになり、自信もつき、明るくなった」という。その子に「ハイキングのどこがいいの?」と聞くと、答えは意外であった。
「年下の子どもたちを励まして頂上まで一緒に行き、感動する姿をみるところ」だという。
教育の場は、教室外にもいっぱいある。 |
(教育新聞・コラム「円卓」2008年2月25日掲載) |
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