政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会
更新日:2006年7月25日

ロッキード事件 30年で政治は変わったか

  30年前の7月27日、東京地検特捜部は田中角栄元首相をロッキード事件で逮捕した。私は、事件発覚の当初から、元首相に論告求刑を行うまでの約7年間、捜査・公判に専従したが、元首相は、人間味と精力に満ちあふれた、けた外れの大人物であった。
  かえりみれば、終戦後から彼の首相時代まで、日本国民のほとんど唯一の望みは、貧困からの脱却であった。
  保守政権は、その強い要望にこたえるべく、官による規制権限と財政資金配分権を存分に行使して、業界を育てた。利益を得た業界は政治家にカネと票とを提供し、これを多く得た領袖(りょうしゅう)が派閥を拡大して権力を掌握した。
  その典型である田中元首相は、「頼れるおやじ」として、高度経済成長の成果を、新潟を含む地方に公共事業等を通じて配分した。
  そのような政治の構図の下、政治献金の規制は不十分で著しく透明性を欠き、裏資金で行われる投票買収は全国に蔓延(まんえん)していた。
  しかしながら、70年代後半、日本が経済先進国の仲間入りをすると、国民の志向は経済成長絶対主義を脱し、複数の政策の提示が求められる時代に入る。その変わり目に、田中元首相の汚職が摘発されたことは、偶然とはいえ象徴的意味が大きい。
  あれから30年、投票買収は激減し、国民の意識は向上した。政治資金は、三木内閣以降累次の制度改正を経て、ある程度透明になり、政党助成金の効果も相まって、典型的な汚職事件は相当減ったと推測される。ただし、迂回(うかい)献金や政党支部資金など不透明な部分が残っており、日本歯科医師連盟の献金に類するものが発生するおそれがある。
  汚職の基盤にある財政資金の配分については、手続きが不透明なままであるし、過剰な規制の撤廃もまだまだである。小泉首相による官から民への掛け声の下、規制緩和の数はそこそこ出たものの、その実質については官の抵抗が巧妙かつ執拗(しつよう)である。後継首相の指導力が待たれる。
  地方分権も、まだ序の口である。
  ただ、国民を守るための行政は残るから、権限行使の透明化を最大限に図らなければならない。その一方で、カネがものをいう政治から、政策によって動く政治に変えていくことが肝要である。
  その視点からすれば、細川内閣の政治改革により小選挙区を導入したことが、かなり有効であった。あわせて派閥を弱める効果もあり、小泉首相による派閥の人事権無視と相まって、派閥が政策集団に移行するきざしも見える。
  しかし、肝心の民主党の政策が、対立軸としての魅力に乏しい。田中元首相流の地域の有力者まわりをやめ、無党派層との集会を重ねてその意見を吸収すべきであろう。自民党などと「相乗り」で推薦した知事が敗れた滋賀県知事選の轍(てつ)を踏んではならない。
  最後の決め手は、受け身だった国民の政治参加である。
  国民の社会参加は始まっているから、地方分権が進み、政治が身近なものになれば、政治にも参加するであろう。そして、支持政党に対する一般国民の寄付をもって政治活動が賄えるようになれば、利権政治やこれを土壌とする汚職は、消えていくであろう。

(朝日新聞2006年7月22日「私の視点 ウィークエンド」掲載)

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