政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会
更新日:2009年8月12日

まともな政権選択のはじまり

 今度の総選挙は、戦後はじめて国民がまともに政権を選択する選挙ではないかと思う。
 ふりかえると、戦後から1975年ころまでの日本は、経済的には、政官財一体となって先進諸国に追いつこうと頑張った時期であり、政治的には、共産主義体制の選択肢を捨てて自由主義体制を固めた時期であった。
 1975年ころから80年代いっぱいは、経済的には、なお官主導で世界経済の主流に乗り出していった時期であり、政治的には、その流れを支える自民党に政権を託すほかなかった時期であった。
 90年代から05年ころまでは、経済的には、厳しい状況の中、民主導の経済を確立しようともがいた時期であり、政治的には、混乱しながらも改革を唱え、二大政党への流れを徐々に進めた時期であった。政党が混乱したため国民は選択に困って無党派層が増えた。
 国民を大ざっぱに、経済的利益を追求する層と生活の充実を求める層に分けて、政権選択との関係を見る。利益追求層には、経営者やその活動を支える官僚、投資家などが入る。生活層には、勤労者、消費者、高齢者や学生、主婦などが入る。2つの層を兼ねる人たちも多く、区分は流動的である。
 戦後からの自由主義体制確立期には、生活層の一部が共産主義ないしは社会主義の体制をめざしたが、利益追求層はもちろん生活層の多くが、自由主義体制をめざす政党を選び、自民党が誕生して政権を確立した。貧しかったから、モノを求めたのである。
 その後、80年代いっぱいの経済発展期も、なお多くの国民にとってモノやカネが最重要な時期であり、その願いに応える政党は事実上自民党だけであった。
 しかし、民間企業が実力をつけるにつれ、官による主導は桎梏となり、これから脱しようとする動きが始まる。ここで、従来型の政官財による利益追求を掲げる政党と、民による利益追求を掲げる政党とに分裂してくれれば、国民は選択できた。それに、生活の充実を最重点の政策とする政党がまとまってくれれば、すっきりと3つの政権の選択肢が提示できたのである。しかし、選択の軸となる政策による政党再編成は成らず、自民党をぶっ壊す人が自民党総裁となって、国民はまともな選択が出来なくなり、生活層の多くが自民党を選んだ。
 安倍、福田、麻生政権の混迷は、政策の軸が定まっていないために生じたものである。
 ところが、国民の意識は政治家より先に進んでいる。これを流れでいえば、旧来の政官財による利益追求派の政治家は、利益追求層からも見放され、やがて消えゆく運命にあるだろう。もちろん旧来の仕組みによる利益を得ており、あるいは期待する人々もまだ相当程度いるから、古い顔を生かして当選する政治家もいるであろうが、そういう政策を実現する力は失われるだろう。
 今の段階で利益追求層が選択したいのは、民主導で経済を建て直す夢と具体策を持つ政党であり、生活層が望むのは、口先でなく、安心と充実を実現するための具体策を持った政党である。その意味で、今度こそ国民がまともに政権を選択できる総選挙になると期待できるのである。
 そして、05年ころ以降の最大の課題は、経済的にも政治的にも、民主導の経済により生じた不当な格差の是正であろう。そうなると生活層を基盤とする政党が多くの支持を集める流れになるであろう。
 ただ、生活層の中でも多い勤労者層は、生活基盤の確立は強く望むが、努力しない者に対するバラマキには大きな抵抗感を持つ。

(電気新聞「ウェーブ」2009年8月5日掲載)

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 [日付は更新日]
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2009年7月1日 新公益法人のゆくえ
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