政治・経済・社会
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JANJAN映像メッセージ 発言概要
堀田力の新しいふれあい社会づくり
(2006年2月16日撮影)
No.12 ライブドア事件の意味(下)  事件が提起しているもの
●異常な富の集中

  さらにもうひとつ先のことだが、経済競争で、とくにITの分野などは独占につながりやすいという特徴がある。別にITに限らずビデオでもなんでもそうだが、ひとつの基本様式をつくってそれに乗っかって新しいものをつくるというと、その基本様式に勝った方が利益を独占するということがある。

  著作権というのは、それはいろんな人に考えるインセンティブを与えることですばらしいが、ITのように世界規模のものになると一挙にすごいお金が儲かるという、従来の製造業、サービス業ではありえないような富の集中が起こってくる。そういう経済になってきている。

  ホリエモンたちもITの市場をめぐって独占したいというのでせめぎあって、かなり独占的状態だから、巨額の利益が特定の人のところに集まるという、こういう経済になっている。そこまでは従来の経済学も独占禁止法も著作権法も予想していない。知恵はすばらしいが、それにしてもその知恵一本でそれだけの金が集まるのかという、そこまでは仕組み自体が予想していないのだ。それでいいのか。

●経済というより倫理・道理の問題だ

  そうなりたいというのはみんな夢で、アメリカンドリームでビル・ゲイツになりたいという若者の夢があるのかもしれないし、日本もホリエモンになりたいという若者たちの夢があって、それが自分でものを考えよう、努力しようというところにつながるのはすばらしいが。それにしても自家用機がほんの何年間で買えるようになったり、ビル・ゲイツに至っては州の予算以上の金を短期間で独占できる富が集まったりというのは、これは従来の経済では予想できない異常な事態で、経済の問題というより倫理、道理の問題なんだと思う。

  絶対的な平等主義はとんでもない話で、それはインセンティブをなくすが、本人が生活するには全然必要でないお金が一挙に集まってしまう。一挙に何百億というお金が何年かの間のひとりの人に集中する。どんなに贅沢したって使えないお金が生じる。そういう人間として生きていくうえであまりに過剰な富が集中することは、憧れを通り越して不当な差別、あきらめをむしろ生む。

●富の偏在は税で正す仕組みを

  それは税金で対応すべきだと思う。事業費に投入するというならそれはそれで結構だがそれをギャンブルに投入する。そんなお金は全然無駄だ。人類社会にとっても本人にとってもプラスにならない。寄付するなら結構だが。寄付しないなら、税金で取り上げてみんなのために配分するという仕組みをつくっていかなくてはいけない。

  ここ20年ほどの間に、日本は税の最高税率を随分下げた。これは平等主義が行き過ぎていてインセンティブがなくなるというのである面では良かったのだが、一方で、まったく不必要な富の偏在が生じている。

  親からもらった財産もそうだ。生かして使わない人がほとんどだ。事業資産に使ってみんなのために生きているなら税金でとる必要はないが、ろくなことに使っていない。そのひとの一生、最高度の贅沢をして生きられる分以上は課税で取り上げて分配する。そういう富の分配をしないと過剰に富が集中する。それが社会の腐敗を招く段階になりつつあるので、そういう仕組みも考えなくてはならないと思うのだが。

 
●夢を託した若者たちへ
  ホリエモンがITという市場をつくり、これは一応実がある。金融であれだけ儲けていたことはみんな知らないのだろうが、これも半分位は実があると思う。そういう実のあるところでいろいろ知恵を出してみんなを喜ばせてそれで儲けていったら、これは大ヒーローだろう。

  それにしてもあんなに儲かるのかなというところはみんな疑問には思っていただろうが、ITなんていろいろ知恵を出せばそのくらい儲かるかと思っていただろう。それはまあ正しいと思うが、そこがそう簡単には儲からないよと、あれはインチキだったんだよというメッセージを出した。それは非常に良かったし、でも、まだ知恵を出せばあそこまでいかなくとも、相当は儲かる、自分もへたばっていないでなんかやってみようと、そういう思いは残っているのではないか。それはそれで良いと思う。

  みんなに良い製品、良いサービスを提供してみんなも喜んでくれたらそれで儲かったらすばらしいじゃないのと、そういう風に考えてくれればすばらしいと思いますね。

  今度のオリンピックで、スピードスケートの500のアメリカの選手だったか、彼は大統領になりたいと思っていたが、北欧の選手が、スケートで儲かったお金で困った人たちを救っているのを見て感激して、自分も体力があるからスケートをやって儲けて自分の思いを生かしたいとがんばったと、新聞に出ていた。それで今度優勝してもらった奨励金をスーダンの難民を救うためにポンと全額寄付したという。なんのために金メダルがほしいのか、なんのために滑るのかと考えて、がんばる気になったという。やっぱり発想が違うなあと思った。26歳ですよ。

  そう考えるとすべることの意味が格段と張り切る気になるし、エネルギーが出ると思うんですね。単に「有名になりたい」というだけでなく、「それで何をしようか、みんなのために」と・・・そう思いますね。

 
●闇の世界の問題
  闇の世界は、アメリカにもヨーロッパにもどこにもあって、これも弱いところを常に狙っている。儲けた金でどんとギャンブルしてみたり、偽り、社会に言えないようなことをやったらこれはとたんにおしまいだ。

  これは株で儲けたい人よりもっと敏感かもしれない。すぐそこへ寄ってくる。これを公表したらどうなるかと。公表していない人はされたら大変だから、貢ぎだす。これをやりだしたらおしまいだ。とにかく人に公開できないことにはすぐ寄ってくるから。

  堀江さんやそのグループにそういうことがあるかは私は全然わかりません。仮にあったとしら、闇の世界との関係では被害者なので、自分たちの正すべきことを全部白日のもとにさらして、もしそれがあるなら被害者としてはっきりさせないといけないと思いますが。

  企業でもそうだ。刑事事件になるようなことをやっているようなところはすぐかぎつかれる。事件になる前にそれをネタにしゃぶられて、これはいったんしゃぶられたらどんどんとことん行く。始めはばらされるのがこわくて払っているが、そのうち、払うくらいならばらした方がよいという位までにしゃぶり尽くされて、それから訴えてきて事件になるという、そのときにはさんざん太らせている。

  なんといっても、法に反するようなあるいは出たら世間の非難を浴びるようなことはしない。これはこれをやったらこういう風にしようとか、たとえばスケートで勝ったらスーダンの難民を救おうかとか、そういう目的があったら無理して儲けることはしないし、儲かったお金でばくちしようとなどと思わないはずだ。儲かること自体を目的にやって儲かったら使うことを考えていないから、どんと使うのはばくちだ。使っていることが実にばかばかしい。全然ハッピーではないはずだ。興奮はすごいかもしれないがそれでおしまいだ。社会的にも無駄だ。それは目的がないからだ。

 
●改めて小泉改革について
  小泉改革は日本がなれ合いの経済になっているところに警鐘を鳴らして、がんばる人はその分恩恵を受けていいのだという、そちらの方に仕組みを変えようとした、その点はまさに適切な方向だったと思うが、それは当然に行き過ぎるといろいろ影を生み出すし弱者を生み出すわけで、一方でがんばるものが報われる活力ある社会といいながら、それに乗れない、経済に乗れない人たちも活かせる仕組みというものを合わせて言うべきだった。がんばる人が報いられるといっても不当に報われるような資本の仕組み、為替・株の仕組みについては、不当なまでの利益はみんなに配分してもうらうよという仕組みも合わせてつくっていくべきだったと思う。

  なかなか全部をやるのはむずかしいから、まず最初にがんばろうの方をやられたのはそれはそれで良いと思う。が、もうあとの仕組みを合わせてつくりにかからないと。マイナス面が出てきて、せっかくのがんばろうの方すらやっぱりだめではないかと元へ戻ってしまって、なあなあの儲けてはいけない人まで配分受けて儲けるという、談合とか全部そうだが、あっちの方に帰ってしまっては元も子もない。あとを継ぐ人はがんばって正しいメッセージをしっかり出してほしいですね。

(2月16日収録)
(インタビュアー(文責)/ジャーナリスト 大和 修)
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 [日付は更新日]
2006年2月22日 No. 11 ライブドア事件の意味(上) 事件が提起しているもの
2006年1月24日 No.10 アジアの共助社会に学ぶ
2006年1月15日 No. 9  ロ事件から30年 今の社会 (「No8 年明けに思う」から続く)
2006年1月4日 No.8 年明けに思う
2005年12月17日 No.7 改革を阻むもの
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