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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2008年3月10日

新公益法人の税制を活用するために

  2002年度からすったもんだしてきた公益法人改革は、昨年末、政府与党が公益法人税制の骨組みを決め、やっと実質的に決着した。
  新公益法人制度は本年12月からスタートするが、そこで公益法人の認定を受けると、
  本来事業は、それによって収益があっても非課税とする。
  本来事業でない収益事業には課税されるが、その収益を本来事業のために支出すれば、その全額を損金に算 入できる。
  寄付は、所得税・相続税は原則非課税、法人税は特定公益増進法人並みに非課税となる。
  これまでの審議の中で財務省が打ち出していた厳しい課税案からすると考えられないほど大胆な非課税案であり、私たち民間法制・税制調査会が税制について提案した内容は、ほとんど取り入れられている。これで、公益法人の税制の骨組みは、やっとアメリカ並みになると評価できる。
  ただ、この税制は、NPO法人には及ばない。アメリカでは公益法人もNPO法人も同じだから、そこが実態として大きく違う。
  それでは、NPO法人が新公益法人になればいいのではないか。私たちの仲間であるふれあいボランティア団体の多くは、NPO法人になっている。特に、併せて介護保険の枠内事業をしている団体は、ほとんどすべてがNPO法人である。
  私は、介護保険の枠内事業及びふれあいボランティアをしている私たちの仲間は、当然に新公益法人になれると考えている。税制上の優遇措置を受ける社会福祉法人とのバランスからしても当然である。公益法人法における公益目的事業の定義(2条4号)からしても「不特定かつ多数の者の利益の増進」に寄与する行為であって、「高齢者の福祉の増進」(別表4)か「障害者の支援」(別表3)を目的とする事業であるからである。「居場所」は、「地域社会の健全な発展」(別表19)を目的とする事業である。
  ただ、問題は、公益性の認定は、第三者委員会の審議を経るとはいえ、結局内閣総理大臣又は知事の認定にかかっていることである。そこでは、ふれあいボランティアは公益性があるとしても、介護保険の枠内事業は、営利事業もやれる性質のものであり、報酬を受ける事業でもあるから、本来事業(公益目的事業)とは認められないという議論が出る可能性がある。
  その議論でいくと、収益のある事業は、たとえ収益を分配しなくても、公益を目的としない事業と解されることになり、今回の税制措置によって、本来事業非課税という正しい骨組みを打ち出しても、それは空振り(実際にはないに等しい)になるおそれがある。
  そういうおかしい結論になったのでは、元も子もない。実際私たちの仲間がやっている介護保険の枠内事業は、とびとびの時間労働であること、また、軽介護の報酬がきわめて安いこと、などの実情から、営利事業は手を出さない(出せない)分野の事業である。これが公益目的事業にならないのは、実質的にもきわめて不当だと考える。
  私たちと同じ問題を抱えている法人は、文化、芸術や教育、人権など、人を直接の対象とする公益活動・NPO活動をしている分野に数多い。それらの団体とも連携しながら、本年12月から始まる認定ぶりを注視し、状況によっては必要なアクションを起こす覚悟でいる。

(『さぁ、言おう』2008年3月号)

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 [日付は更新日]
2008年2月7日 居場所の公益性
2008年1月10日 進路をどう取るか
2007年12月7日 輝く瞳
2007年11月7日 コムスンの教え
2007年10月10日 改めて枠内サービス提供の意義を考える
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