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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2012年8月11日

前に進むしかない

 情けない話である。4千万円ものお金を使い込まれてしまった。信頼していた財団のリーダー(81歳)が、我が財団の発足時に支援者から頂戴した大切な基金から7年にわたって引き出し、自分の小遣いに使っていた。信頼し切っていた自分が情けない。財産犯は、財産的損害を与えるだけでなく、被害者の心に大きな傷を与えるのだと実感した。
 半分は犯人の子どもたちが、半分は私が講演や執筆で貯めたお金から穴埋めし、財団の経済的被害は回復、二度と起きないようにチェック体制や人的体制も整えて、各方面に報告、謝罪し、取りあえずの処置は完了した。しかし、失った信頼を回復するには、どれだけの年月が必要であろうか。
 この問題に関して支援者、理解者の方々から頂戴した暖かいお言葉は、一生忘れることができない。
 前を向いて進むことが唯一の償いだとの力強い励ましが耳の奥にひびいている。
 これまで以上に頑張ります。

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 7月初旬宇都宮に全国のインストラクターが集まって開催した戦略会議では、半分の時間を被災地支援の戦略、あと半分を各地の日常活動展開の戦略の協議に充てた。
 被災地は、復興基本計画の策定を終え、この春から居住ゾーンへの住居の移転に関する住民の意向調査を行い、居住計画を具体化する作業に入っている。表面的には、復興の進捗状況には何か月程度の差しかないが、実体を見れば、深刻な差がある。自治体が議会を通した基本計画に住民が納得しておらず、別の居住ゾーンの開発を望む住民が相当多数にのぼる地域が、けっこう残っている。自治体が住民の声をしっかり聞いていないところほど、そういう地域が多い。そのまま復興を進めても、結局多くの住民が、不満を抱えたまま地域から出て行ってしまい、地域が崩壊してしまうおそれがある。
 そういう事態ににならないよう、私たちは、絆を深め、住民の意見をまとめるお手伝いをねばり強く進めるための協議をした。自治体の状況に応じて時期は異なるが、これからの手法は、住民、医療・福祉などの事業者、そして行政が一同に会し、本気で議論するフォーラムに重点を移していく。
 今が正念場である。
 そして、いつまでかかるかわからない福島県の県外避難者への支援。
 福島のインストラクターが「わすれな草」という小さな情報誌を発行しはじめた。忘れてはいけない、忘れないように。
 県外避難者への支援はこれからみんなでじっくり取り組むほかない。

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 日常活動の今年の目玉は、いわゆる24時間巡回サービス(定期巡回随時対応型訪問介護看護)と、日常生活支援総合事業の活用。
 24時間巡回サービスは、私たちが最重要視する尊厳の確保を、ケアの面から実現する切り札である。尻込みする自治体を後から押しながら、私たちは、在宅で最後まで暮らす要介護者にふれあいを届けたい。それなくして尊厳ある生活を実現することは難しいからである。
 日常生活支援総合事業は、私たちにとって、これまでの行政施策とは格別に異なる重要な意義を持っている。これまで私たちが展開してきたインフォーマルサービスを、地域のニーズに応じ柔軟に展開できる仕組みであって、しかもそれを介護保険制度と連動できる仕組みにしようというのである。自治体は、柔軟さが苦手でほとんど手を挙げていないが、それを地域で形にするのは私たちの責任である。
 私たちの自覚と力量が問われている。

(『さぁ、言おう』2012年8月号)

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 [日付は更新日]
2012年 7月11日 大槌町の前進
2012年 6月14日 地域包括ケアのイメージ
2012年 5月11日 いろんな壁が出てくるが
2012年 4月11日 全国体制で福島避難者支援
2012年 3月 8日 釜石の復興 一歩一歩、前へ
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