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定期連載 挑戦−幸福づくり
更新日:2012年12月10日

やることがいっぱい!

 今年、さわやか福祉財団は、被災地の復興の応援に相当なエネルギーと資金を投入した。 しかし、それだけの成果は十分にあった。選んだ9のモデル地区では、被災住民を主体に、自律的に地域包括ケアのある町への復興を目指す動きが組織的に始まっている。そこでいう「地域包括ケア」は、住民の絆、ふれあい、助け合いを大前提とし、インフォーマルサービスを包括的に組み込んだ、尊厳の確立を目的とするケアである。
 被災自治体も、大船渡市や大槌町、釜石市や気仙沼市のように、首長が地域包括ケアを新しい町に導入しようと積極的なところや、山元町のように、コンパクトシティを強力な復興理念とするところもある。住民の反応は大きく、自治体がハードに手いっぱいのところでも、「最後まで自宅で暮らせる、絆のある町にしよう。そのために自分たちも頑張るし、行政にも頑張ってもらおう」と盛り上がり、志ある住民の組織的な動きにつながっている。
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 復興応援で活躍した職員やインストラクターたちも、失礼な表現を許して頂ければ、大きく成長した。平素は心のままにふれあい、助け合いを広めていればよかったのが、地域包括ケアの意義、尊厳ある生き方、住まい方、医療や福祉とインフォーマルサービスの連携のあり方などを学び、その必要性を住民だけでなく、行政マンや事業者などにも説明している。特に、それらのソフトを、被災地の復興計画にどう取り入れるかについて自ら考え、ハードや産業、雇用だけしか頭にない専門家たちを説得するという、とてつもない作業にも取り組んだ。ふれあいや絆を社会に復興させるためには、被災地では、ケアや住まい全体の復興の中にこれを組み入れ、ハード面でもこれにしっかり対応したものにする必要があるからである。たとえば、施設や集合住宅には「寄り合い所」を設け、病院や施設、住宅の配置や形状も、在宅の暮らしを支えるという理念に立って決めることが必要である。
 そして実は、そういう作業は、被災地でない地域でも、被災地と同様に求められる。日本全体を絆を組み入れた地域包括ケアの町に構築し直していかなければならないからである。施設の増設では進展する高齢化に対応できず、尊厳ある生き方を求めるこれからの高齢者の心を満たすこともできない。
 事情があって復興応援活動ができなかった仲間の方々も、この活動で成長、開眼した仲間たちから、その知恵や感覚を吸収してほしいと願っている。
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 来事業年度いっぱいは、復興応援活動を中核にするほかないと考えている。ほとんどの町が今は具体的なまちづくり計画の策定にかかったばかりである。計画が固まる前に住民の意見や希望を伝えることが決定的に重要であり、住民の方を向いた自治体であれば、これを最優先で取り入れる段階である。これが、来事業年度の終わる頃になれば、かなり骨核が固まり、住民の意見や希望が通る範囲は、今よりはかなり縮小されているかと予想される。その頃になると、住民の希望はかなり個別のものになっているであろう。そしてその頃には、住民の希望を伝えるシステムもでき、また、これを支援する住民主体の組織も広がっていると期待される。
 そうなるまで、私たちは応援を続けなければならないだろう。日本全体のため、そして、私たちのために。
 そして、来年は、日常生活支援総合事業やふれあい事業が介護保険事業や医療とつながり、一貫した絆と暮らしとケアを地域で実現できるようにするという、いわば究極の福祉社会構築のための最後の挑戦の第一歩としたいと願っている。今年は、その助走期間であった。
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 私たちのやらなければならないことは、次々と生まれてくる。福祉や医療、暮らしの大転換期の最中だから、仕方がない。
 その覚悟をして、正月3日間はのんびり過ごすこととしましょうか。

(『さぁ、言おう』2012年12月号)

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 [日付は更新日]
2012年11月10日 住民の声を聞く
2012年10月11日 復興推進の重点策
2012年 9月11日 意見すり合わせの時期
2012年 8月11日 前に進むしかない
2012年 7月11日 大槌町の前進
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