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定期連載 暖流
更新日:2014年12月25日
世代間の亀裂
 今回の消費増税の延期がはからずも世代間の亀裂をあらわにしようとしている。
 おりしも社会保障改革が進行中であり、子ども関係の諸制度も高齢者関係の諸制度も、消費税8パーセントを10パーセントにする分の税収をあてにした制度改革案を組み立てている。
 特に子どもやその子育てに対する支援が遅れているため、今回の改革に対する子育て関係者の期待には熱いものがあった。だから、今回の改革に期待し、協力してきた子育て関係の市民は、突然の増税延期に失望し、大きな不安を感じた。
 彼らは早速「たとえ増税が延期されても財源をどこかから確保して既定どおりの改革を進めてほしい」という運動を展開した。
 政府内部から「子ども・子育て関係については予算をつけて予定どおり改革を進める。改革を延ばすのは高齢者関係で、特に年金関係は先延ばしにして、増税しないとどんなことになるか実感してもらう」という声が洩れて来た。
 ひどい考え方だと私は怒りを覚えたが、子育て関係者の中から「よかった。バンザーイ」という喚声が起きたのには衝撃を受けた。「よかった」と喜ぶのは当然であるが、彼らの「バンザイ」の裏には、明らかに高齢者の年金に対する反感が感じられたからである。
 確かに子育て中の親たちは厳しい生活の中から高齢者の年金分も負担しているのだから、高齢者が(彼らの目から見れば)のんびり年金暮らしをしているのは、シャクにさわることなのかも知れない。それはわかるが、負担の配分をめぐって高齢世代と現役世代の間に亀裂が入るのは危うい。
 それを埋めるのは、高齢者が現役世代のために汗を流すことであろう。特に子育ては、全部を親の責任にするのでなく、地域の高齢者もその経験を生かして支援し、現役世代を少しでも楽にすることである。
 新しい子育て制度は、地域の参加を求める仕組みになっている。みんなで子育てをする優しい地域社会を創っていきたい。
(京都新聞「暖流」2014.12.14掲載)
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