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提言 福祉・NPO・ボランティア
更新日:2008年8月27日
働き方を選べる社会
 規制緩和がもたらす格差問題の一つとして、非正規労働のあり方が問われている。
  ところが、非正規労働者の多くを占める女性労働者、特にパートタイマーは、かなり多くの人たちが、その働き方に満足しているという指摘がある。その詳細は、橘木俊詔教授の『女女格差』(東洋経済新報社 2008年)を見てほしいのだが、私の実感でも、働き方に対する志向は、ここ20年ほどの間激しく変動している。
  若い男性たちの間に上昇願望が薄れ、自己実現志向が強まり始めたころ、女性たちの間では男女平等の猛烈キャリアウーマンを目指す人たちが目立っていたが、ここ何年かは男女とも就職や上昇を絶対視せず、生活とバランスのとれた働き方を求める若者が増えているように感じる。若い女性は例えば子育ての期間は、子供が就学するくらいまでは職を引いて子育てをしたいと望む人たちが多くなっているように思う。いってみれば日々のワーク・ライフ・バランスではなく、人生を縦に考え、その中で仕事と生活や子育て、学習などを長期的スパンで調和させたいという志向である。
  こういう若者たちの志向を満たし、その活力を生かす社会は「多様な働き方・生き方が選択できる社会」である。これは、政府が昨年12月に定めた「仕事と生活の調和憲章」及び「行動指針」に描かれた、目指すべき究極の社会である。
  私も早くから「働き方を選べる社会」を提言してきたが、本当にこの社会を実現するのは簡単なことではない。働き方を選べるようにするには、適材適所で、自分のその時の能力に合った職場が容易に見つかる仕組みが必要だし、そのためには求職者のさまざまな能力が客観的に評価され、他方求人側のさまざまな職に必要とされる能力も具体的、個別的に評価され、そのマッチングが瞬時に行われるシステムが必要となる。
  そして、同一労働同一賃金による採用が常時行われ、休職や転職が不利なくできる社会にしなければならない。その一方で、働き方も自由に選択できる多様なものが用意される必要がある。医師、看護師などについては、もうかなり実現している社会である。少子化による労働力不足が進むにつれ、実現の可能性が高まるであろう。
(時事通信社「厚生福祉」2008年8月22日掲載)
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