更新日:2009年9月16日 |
介護業務の整備 |
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日本の経済発展が、同時に安定した雇用の場の確保につながるためには、人に対するサービス業の拡大が決め手になるであろう。それは明白に「内需」であり、そして、労働の集約化になじまない産業だからである。中でも大きな需要の伸びが確実な産業は、介護事業である。その伸びは、まぎれもなく高齢化の進展に比例する。
経済の回復、発展を福祉や教育などの充実によって図ろうとする政策は、近時、諸政党のマニフェストにも表れるようになったが、具体策が見えない。北欧諸国の例を見ても、それは結構長い年月を必要とする。国民の合意を少しずつつくりながら、官民協力してじっくり構造を変えていかなければならない。
そのためには、介護事業が受け皿として整備されることが必要である。
ところが現在、介護の政策立案者らが熱中しているのは介護事業のステータス向上であって、介護従事者の資格のレベルアップである。だが、資格獲得が難しくなるほど、受け皿としては狭くなっていく。しかも、資格を取得しても仕事の内容は無資格者とさして変わらないから、資格を取るインセンティブが働かない。
ここは介護という仕事の内容を、その難易度によりランク付けする必要がある。とはいえ、介護の内容を細分化してランク付けすることはできないだろう。となると「人」によるほかない。現場ではよく認識されているが、おむつを替えるのが極めて難しい人もいれば、簡単で誰にでもできる人もいる。食事の補助でも入浴でも同じである。それは、利用者の精神的自立度と、身体的自立度の関数で決まるのであろう。難しい認定方程式を作らなくても、現場の経験によって利用者の難易度を三つに分けることは難しくないだろう。
そうすれば資格に応じて担当する人が決まってくるから、それによって報酬と職務内容を合理的に差別化できる。併せて、無資格者であっても担当できる仕事が相当生まれ、ここに他の分野における失業者を受け入れる幅が生まれる。
そのように受け皿を整備しつつ、併せて教育システムも整備して、人に対するサービス業(内需)を充実させていく政策が求められている。
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(時事通信社「厚生福祉」2009年8月25日掲載) |
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