更新日:2009年2月21日 |
アメフトに夢中
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そうでなくても忙しいのに、9月から1月のせわしなさは、尋常ではない。アメフト(アメリカン・フットボール)のビデオを見なければならないからである。NFLの試合は、この時期全米各地で行われ、その録画がBS2かGAORAで、ほとんど毎日放送される。それを全部見ようというのだから、マニアックというほかない。
若い頃はアメフトというゲーム自体知らなかった。ところが30数年前、家族とともにアメリカに渡り、ワシントンDC近郊に住んでから、まず子どもが染まった。下の子がワシントンレッドスキンズ、上の子がマイアミドルフィンズ。ひいきチームの子ども向けヘルメットやユニフォームを着てご機嫌だが、小学校前の子らにどれだけゲームのルールが分かるのか。それでもテレビを見て、自軍が進むと歓声を上げている。
つられて見るうち、こちらがはまった。攻守双方の戦略のぶつかり合いがたまらない。時の大統領ニクソンが、試合中に、ホワイトハウスからレッドスキンズのヘッドコーチに電話してきて、戦略のアドバイスをするので、ヘッドコーチが困っているという報道があったが、それほど大人たちが夢中になる。
さっそく家族連れでレッドスキンズの試合を見に行ったが、ここは当時治安の悪い地域にあって、ロックしていたのに車内を荒らされた。幼い子に事故が起きては困るから、以後はテレビ観戦で騒いでいたが、帰国して、1976年、ロッキード事件の担当検事となり、アメフトどころでなくなった。
そのまま自然に忘れていたが、1983年、突如関心がよみがえった。わが母校京都大学アメフト部が、正月3日のライスボウルで、実業団チームを破って日本一になったのである。青びょうたんのへなちょこがそろっている京大が、あの激しいアメフトで優勝?狐につままれたような気分だったが、名伯楽水野監督と名将大社QBの存在を知って、思い出した。「そうだ、アメフトは戦略だ。頭のゲームだ」。
以後、思いは燃え上がる一方で、いまや報道ステーションを見たあとは、アメフトのビデオ三昧。レッドスキンズがタッチダウンしようものなら、梅酒を持った右手を突き出し、ウォーなどと叫んでいる。とても人様には見せられない。子どもたちも妻も今は興味を失い、同好の友もなく、孤独な楽しみである。
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(ぎょうせい発行月刊「フォーブス日本版」2009年3月号掲載) |
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