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提言 生き方・その他
更新日:2008年10月24日

挨拶をしよう会

  「みんなで明るく挨拶をしよう会」が設立十周年を迎えた。参加者は着実に増えている。記念のパーティーで、私は「冷たい世の中、ここまで会が発展するとは」と正直な感想を述べた。
  設立の中心人物は、京大出身の元通産官僚野々内隆さんである。彼の発想は、「会社の幹部に働きかけて、彼らの方から部下に挨拶すれば、挨拶の輪が広がっていくのではないか」というものである。彼の運動を株式会社のコクヨ有志が支えた。
  時の文部大臣は町村信孝さんで、「少し補助金を出そうか」という話もあったが、野々内さんたちは断った。「お金のかかる運動じゃないし、補助金を貰って官に縛られるのは嫌だから」というのである。民の心意気高らかなのがよい。
  そのようにして、大組織の幹部を対象とする純粋民間の、ちょっと変わったボランティア活動が始まった。そこが気に入ったのか、町村さんは、国会の忙しい中、記念パーティーにも参加して、熱いエールを送った。
  私は、地域の活動はまず挨拶から始まると思っているから、発起人に参加させて貰った。
  しかし、世の中、なかなか温かくならない。
  入会された元チェアマン川淵三郎さんが「家の近くで会った母子連れに挨拶したら、若いお母さんが子どもに『知らないおじさんに挨拶したらダメ』と叱った」とがっかりしておられたが、そういう「教え」がかなり一般化している。子どもが挨拶しなくても、残念なことに誘拐は起きる。これを防ぐ手だてをしっかりすることが必要で、子どもに大人全体に対する不信感を植え付けるのは、子どもの成長に大きなマイナスになると思う。
  会の幹部である滋賀の宮川進さん(78)が大津市長に働きかけ、大津市の団体が「あいさつはえがおそえて わたしから」というポスターを作って町に張り出した。
  そういう市が増えてほしいと思う。
(京都新聞コラム「暖流」2008年10月19日掲載)
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