更新日:2012年3月8日
|
すごいおじさん |
|
すごい人がいる。
今まで人からただでかき集めたお金が950億円。
詐欺師ではない。その正反対、最高の人格者。彼を信頼してボランティア活動をする人が5万人、寄付をした無数の人の善意が積もり積もって950億円。すべて日本や世界の遺児たちのために使われている。
ご存じ、あしなが育英会の総元締め、玉井義臣さんである。
どんな立派な姿、形かと思った人は、会って驚くだろう。感じた通り言わせてもらえば、ただのおじさんである。誰に対しても偉ぶったところはまったくなく、人懐っこい目をして、のんびりした話し方をする。
喜寿の祝いのパーティでは、あしなが育英会が設置・運営する寺子屋で学ぶウガンダの子どもたちが、パソコンの画面の向こうに群がって、いっせいに「タマチャーン」と叫ぶ。喜寿のタマちゃんが大声で「ありがとう!」と日本語で叫ぶと、意味が分かるのか分からないのか、男の子も女の子も、大喜び。顔を見ただけで、うれしくてならないのだろう。
車椅子で飛行機に乗り、ウガンダへ乗り込んだのは知っているが、いつの間に子どもたちとこんなに仲良しになったのだろう。
お祝いのパーティには世界のいろいろな国から、肌の色が違う少年少女たちが来ていて、純真そのものの眼の輝きで彼を取り囲む。彼らが何を言ってもタマちゃんは大声で、「ありがとう」。その一言で、気持ちが通じ合うのが感じ取れる。
これが、タマちゃんの特技。そして、お人柄。
40年以上、この人柄と遺児への涙もろい情でお金を集め、虹の家を建てて彼らの居場所をつくり、奨学金を出してきた。
誰にも出来ないことなのに、タマちゃんは普通におじさんなのである。
しかし私は知っている。人を見分ける嗅覚は、実に鋭い。タマちゃんが自然に避ける人がいて、その人の心は美しくないのである。
だから、タマちゃんの周りには、善い人しかいない。
このおじさんは、ただ者ではない、すごい人なのである。 |
(京都新聞「暖流」2012年2月26日掲載)
|
|