東京は神楽坂に、市民と新宿区が共同で立ち上げた子育て広場「ゆったり〜の」がある。親子が好きに訪れて、ゆったり過ごせる居場所である。
そこで2012年からこどもたちの人間関係の観察を続けている先生方がいる。目白大学子ども学科の松永愛子先生、小田原短期大学の齋藤史夫先生らである。
先生らによれば、親子の居場所における親の子育ての研究は多々あるが、こどもの人間関係を中核にしてその成長を研究したものはきわめて少ないらしい。人間力(自助と共助の力)はこども同士の交わりの中で育つと主張している私からすれば、松永先生らからうかがった貴重な観察結果は、当然のことながら、私の主張を裏付けるもののように思われた。
「当然のことながら、とは高飛車な」と松永先生に叱られそうであるが、たとえば松永先生は「発達心理学上は、模倣は1才位から起きると言われているのだが」と前置きされながら、生後5ヶ月のYK君が1才2ヶ月の子が滑り台で遊ぶ姿に興味を示した様子を観察事例として報告される。聞きながら、生意気な私は「こちらをじっと見る零才児に笑って手を振ると、目を輝かせて反応することはよくあるんんだけどな」と思ったりする。
それはともかく、松永先生らの研究は素晴らしくて、こどもたちは口をきけないうちから共感の心を育て、友だちと交わる能力や人への優しさを自ら育てていることがよくわかる。
先生によれば、成長のキーワードは、同調と模倣なのだそうだ。模倣がこどもを成長させることは数知れず体験しているが、そこで思い出すのがミラーニューロンである。その発見者ジャコモ・リゾラッティによれば、人間が他者に共感する能力は大脳新皮質の運動前野の領域にあって、他者の行動を見た時、あたかも自分がその行動をしているような反応を示す神経細胞の力だという。
そうだとすれば、話は飛ぶが、高齢者らを助け合い活動に引き込むためには、似たような高齢者が助け合っていきいきと暮らしている姿を見せて、見ている方を幸せな気持ちにさせ、やる気にさせるのが有効であって、それが助け合い文化を創る王道だと思ったのだが、いかがでしょうか。
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