更新日:2010年12月1日 |
「子どもが主人公」 |
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横浜で子育ち支援のNPO「びーのびーの」を運営しておられる奥山千鶴子さんが、スウェーデンの子育て事情の見学に行かれた時のこと、奥山さんが、「1歳の子を親から離して、かわいそうではないのですか」と質問すると、「子どもが社会性を学ぶのは、子どもの権利です」との答が返ってきたとのことである。
「日本だったら、つい、子どもがかわいそうと思ってしまうのに、考え方が違うんですね」と、奥村さんは強い印象を受けたようだった。
デンマークの子育て関係者が日本の保育園を視察していた時の話だが、預かっている幼児がよちよちと歩き始め、縁側から落ちそうになった。保育士が慌てて駆け寄り、抱きとめると、「そのやり方は違う」と言う。
デンマークのやり方では、縁側の下にまわって、もし幼児がそのまま進んで落ちたら、しっかり抱きとめるのだという。そうすれば、子どもは、下に落ちる恐さを身に染みて覚え、以後は、危ないところで立ち止まるようになるそうだ。
日本は、子どもを、大人が守る対象と見ているのに対し、北欧では、子どもは自らの体験で育っていくのを助ける対象だと見ているのがわかる。
フィンランドの小学校の教科書が、1年生から「ミクシ(なぜ?)」の連続で、子どもに考えさせることを主眼としているのに対し、日本の教科書は、覚えさせることを主眼としているところも、子どもの見方の差が現れていると言えよう。
日本の社会も、大人に守られ、依存心が強く、指示待ちで自ら考えないような青年は、必要としていない。もう、抱きしめてかわいがるだけの子育てから、子どもが仲間とつくる社会の中で自ら育つのを見守る子育てに進む時に来ている。 |
(京都新聞「暖流」2010年11月21日掲載)
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