政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会
更新日:2009年9月14日

働き方を選べる社会に向けて転換

1 ぼつぼつ日本でも、アメリカのように、定年制は憲法違反だという考え方が出てきてもよいと思う。
  寿命が延びただけでなく、能力の個別化が進み、65歳にしろ70歳にしろ、その年齢を超えても十分働く能力と意欲を持った高齢者が多数存在する社会になったからである。
  年齢による差別は、合理的根拠を失った。
2 定年制廃止を実質的なものにするためには、万人にその能力と意欲に応じて働く権利(社会権)を保障することが望まれる。高齢者に限らず、働く者の立場に立って言えば、働き方の構造を「働き方を選べる社会」に向けて、抜本的に転換することが必要な段階にきているのである。
  それは官民あげての大変な作業になるが、成功すれば万民に幸せをもたらす。能力に応じて働きたい職場で働くことができ、転職しても休職しても不利にならない。働きたいときに働きたいところで自分に合う仕事ができるとなれば、人生は何倍か楽しくなり、人々はいきいきとしてくるだろう。子育ても生涯学習も社会貢献も、思うがままにできる。
  一方、企業も、自社の業務に最適な人材を常にそろえることができることとなり、その生産性を最大化することが可能になる。
3 このような社会構造に転換するには、いくつもの要件が満たされなければならない。
  雇用・労働市場は、自由で流動的なものにする。雇う者は、雇いたい人材について、求める能力の具体的かつ詳細な内容と、待遇や働き方を開示する。
  一方、働く側は、自己の能力の内容や程度を具体的に示して、企業が開示している待遇や働き方から希望する職場を選ぶ。個々の能力については、きめ細やかな社会的認定制度が用意されなければならない。あとはマッチングの問題である。
4 報酬は個別に評価する能力プラス実績給とし、報酬の最低基準と収入を労働に分配する基準は、人権保障を指導理念に、行政が、科学的に調査に基づいて示すこととする。
  労働組合は、失業者を含めた職種別組合が基本的なものとなるであろう。
5 働き方は、働く人の希望に応じた比較的短期間の契約が標準的なものとなるであろうが、安定した長期雇用を希望する人には、長期的視点を加えた能力給を考えればよい。
6 現状を考えれば荒唐無稽な提案であるが、定年のしばりをはずした高齢者の雇用のあり方の理想を追求すると、ここで述べたような形になる。
  このように理念を徹底的に詰めたうえで、これに照らして今どうするかを考える作業が、長い閉塞状態を突破する糸口を見つけるために必要ではないかと考えている。実は、それに類した発想の作業を厚労省の研究会が行い、報告書も出された。04年に公表の「転換期の社会と働く者の生活−『人間開花社会』の実現に向けて−」である。参考にしてほしい。

(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構発行「エルダー」2009年7月号掲載)

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 [日付は更新日]
2009年8月12日 まともな政権選択のはじまり
2009年7月15日 本末転倒の「政権」論議
2009年7月8日 裁判への市民参加
2009年7月1日 新公益法人のゆくえ
2009年7月1日 政策の具体化
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