更新日:2009年10月14日
政策優先順位間違えずに
「案外、民主党、しっかりやるじゃないの」というのが、私の周りの市民の声である。村山政権の時の社会党所属閣僚と違い、官僚に対する政策の指示ができている。マニフェストの効用が大きい。ただ、政策の整合性あるいは優先順位には多くの人が違和感を抱えている。
その優先順位は、民主党支持層の視点に立って決めるべきであろう。それは、自民党の支持層である経営者側の視点ではなく、自立して生きたいと望んでいる生活者側の視点である。
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その層の平均的な感覚からいえば、「道路の無料化もいいけどそんなに車は使わないし、将来の年金が心配だよな。それより今は、職の安心が欲しいよな」ということになろうか。
アメリカの消費頼みのグローバル産業もいいが、先は見えている。それよりアジアその他の発展途上国との経済関係を深め、相手の生活レベルも上がり、日本も得する方向で経済を伸ばし、働く場を広めてくれた方がやりがいがある。
内需拡大というが、欲しいモノはそんなにはない。それより、介護とか子育てや教育とか、体や心に快いサービスが欲しい。お金をため込んでいる高齢者が多いなどといわれるが、欲しいサービスがないではないか。
働く場は、経済の方だけでなく、非営利の分野でこれを広げることが必要だろう。公務員の数を減らすなら、そこはコミュニティービジネスやNPO、有償ボランティアなど、温かい助け合いのサービスを何倍にも広めないと、ますます冷たい社会になってしまう。
バラマキはやめてほしい。頑張ろうという意欲をなくさせてしまう。それより、安心して自分で生きていく保障が欲しいから、ぎりぎり絞った上でなお必要なら、消費税アップは認めてよい。最小限どれだけの負担が必要なのかがわかるよう、早く全体図を見せてほしい。
自立して生きたい生活者層の望みを大まかにまとめれば、そんなことであろうか。その視点からすれば、民主党がまず財源を絞りにかかった姿は、これまでにない新鮮な第一歩として評価できるし、CO225%削減も、子ども手当の支給も、未来の生活のため頑張ろうという点では評価できる。東アジア共同体も生活者層の感覚に沿う。出だしは悪くない。あとは順位を間違えないよう、市民の声をしっかり聞いて進んでほしいと願うのみである。
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民主党のマニフェストでいちばん物足りないのは、地方分権の推進である。今が大改革をやる最大のチャンスであるから、地方自治体に消費税(売上税)などの課税権を与える(ただし、介護保険料のように、全国調整措置を付ける)くらいの構造改革案を、早々に検討してほしい。地方自治体にも、やる気の首長がある程度は出てきている。それこそやる気のある自治体から権限と財源の移譲を進め、住民とともに頑張る自治体から幸せになっていく仕組みをつくってもよいのではないか。地方の自律による活性化は、社会保障の前進にも新しい職場の創出にもつながるであろう。
民主党の人事で物足りないのは女性議員の登用である。この点は小渕大臣を任命した自民党に劣る。
(信濃毎日新聞「月曜評論」2009年10月5日掲載)
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