政治・経済・社会
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提言 政治・経済・社会
更新日:2009年10月8日

官僚とのバトル制し民意実現を

 民主党と霞が関とのバトルが始まる。お手並み拝見、と冷めた眼で見ている人が多いようだが、民主党に是非勝ってほしいと願っている。民意を代表する政治が、「全体の奉仕者」である行政を支配するのは、当然のことだからである。
 「大丈夫かな」と懸念する向きが多いのは、霞が関官僚のしぶとさが知れわたっているからである。
 官僚が政治家に強いのは、予算と法律と陳情処理を握っているからである。これに対する政治家の武器は、「民意の代表」である。この構図の中で、政治家が官僚に勝つには、どうすればよいか。
 まず、予算である。その編成権が力の最大の淵源であるから、民主党が予算編成作業や補正予算の執行にストップをかけ、国家戦略局に基本的編成権を移そうとするのは、正しい戦略、戦術である。ただし、自分たちの方に民意に沿う確かな方針を持っていないと、細部に進むにつれ、あっという間に骨抜きにされるであろう。基軸はマニフェストをかざして押し切りながら、細部は編成過程をすべて公開して、国民の眼により監視することである。佐賀県は古川知事がそういうやり方を試みたし、三重県では北川知事が、県議会の審議過程で編成情報の公開を試みている。公開は不明朗な予算分取り合戦に歯止めをかける。
 次に、法律である。これは、利益の配分に絡むから、予算に劣らず、票を生み出す力を持っている。そして官僚は、政治家が持たない情報を独占し、また、立法技術をかなりの程度独占しているから、立法権をあらかた独占している。これでは政治家は勝てない。
 しかし、与党は官僚の情報を出させることができるし(ただし、相当な力量と知識がないと、隠される)、立法技術は、法律で実現すべき政策の骨格さえ示す知恵があれば、あとは技術屋に任せて大丈夫である。全部任せるから好きにされるのである。
 以上のことはおおむね承知されているが、陳情処理についてはほとんど知られていない。しかし、政治家が支援者や地元の人の陳情を受け行政に働きかける姿は、ある程度知られている。古い話であるが、田中角栄邸に陳情者が列をなし、下駄をはいて母屋から現れた角栄氏が話を聞いては陳情者の面前で担当官僚に電話するという図柄が、伝説となって残っている。そういう手法は、今日も消えておらず、各省庁の政府委員室が承る比較的小ぶりの陳情から、局長、次官に電話が来る大ぶりのものまで、政治家は、票と政治献金のために、どんどん官僚に借りをつくっている。
 陳情の中には行政のやり方がよくないケースもあるが、多くは、裏ルートが使われるだけあって、無理筋である。闇の中で行政が歪められるのである。もちろんきれいな政治家もいるが、与・野党を問わず、ひどい政治家や、その秘書が存在する。政治家が官僚組織の上層部に入ると、これまで外から行っていた陳情が、業務命令のルートに乗って行われかねない。
 政治家が、官僚に国民のための行政を行わせたいのなら、私的利益のための陳情処理は絶対にやってはいけない。そのことをしっかり自覚した、きれいな政治家を官僚組織に送り込むことである。その上で、民意を背景に、予算づくりと法律づくりの権限を実質的に取り戻し、マニフェストを誠実に実現してほしい。
 最後に、実現しようとする政策の大きな方向に沿った、官僚組織の大胆な再編が必要である。たとえば公共工事がこの10年ほどで半減したのなら、公共工事を担当する公務員も半減していてよいのではなかろうか。組織が残っていると、必ず仕事をつくり出し、予算を要求する。源を断つ政治力が必要であろう。
 私心を捨てた鬼と化して、バトルを制し、民意を実現してほしい。

(電気新聞「ウェーブ」2009年9月17日掲載)

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