更新日:2009年12月9日
子ども手当と友愛社会
民主党政権の「子ども手当」については、裕福な親にも配ることが問題とされている。党の答えは「子育ては個人の問題でなく、社会全体で行うものだから」ということである。高齢者の介護も社会化して、貧富にかかわらず、必要とする者全員を対象とした。子どもも同じにすべきである。そして、子どもは高齢者と違って全員が支援を必要とするから、全員を対象にするのは当然である。
問題は、支援の仕方である。介護は現物(サービス)給付であって、現金給付はしていない。子どもの場合は、親が子育てするのが常態であるから、親に子育て費用を支弁するのはよい。しかし、その趣旨が「社会全体で子育てを行うこと」にある以上、親に費用を支払うというのはいわば二次的、補完的方法であって、第一次的な社会の支援は、社会が直接子育てのサービスを提供することである。その基本形が保育園など養育、教育のサービス提供である。それは、いくら手当をもらっても親単独では提供できないサービスであるから、社会が子ども全員に提供しなければならない。ところが、これが実現しておらず、困り果てている親が多数存在する。それが親の就労の希望を抑圧し、出産を控える原因ともなっている。「子ども手当より前に」、とは言わないが、それを支給するなら、保育を
すべての子ども
に提供する基盤を同時に整備すべきではなかろうか。
日本の未来のために社会全体で子育てをするという政策を遂行しようとする時、最も必要とされるサービスは、共助の力を育む教育である。自助自立の力は、学校や家庭の教育で育むことができる。しかし、共助協働の力は、幼いころから複数の子どもたちと交わる環境の中で自ら身に付けていく以外に有効な育て方がない。ところが現代社会はこの環境を破壊したし、家庭も少子化した。そのため、学識はあるが主体性にも協働の能力にも欠ける指示待ちの社会人が輩出している。
国は、民間非営利団体(NPO)の力も借りて、共助の力が育つ子育ち環境を全国に創り出さなければならない。それが
友愛社会
を実現する王道である。重要な未来のための投資であるから、政策目標と工程が明白であれば、国民は新たな財源の負担にも応じるであろう。
(時事通信社「厚生福祉」2009年11月27日掲載)
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