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更新日:2011年2月20日
伊達直人はいい男

タイガーマスクこと伊達直人君たちの寄附は、二重のショックであった。
 うれしいショックは「けっこう日本にも寄附文化が根付いてきているじゃないか」というショックである。
 少し苦いショックは「私たちは寄附文化の醸成を働き掛けてきているのに、伊達直人君たちをとらえきれていないじゃないの」というショックである。
 日本の寄附の実態については、日本ファンドレイジング協会が、はじめて出した寄付白書に、いろいろと分析している(『寄付白書2010』日本経団連出版)。通覧していえば、個人寄附は伸びつつあるが、米英に比べればまだまだだな、というところであろう。
 しかし、大規模な災害には相当額の寄附が集まるし、テレビのチャリティにはお祭り気分でたくさんの人たちが参加している。お寺のお賽銭や赤い羽根募金もあなどれない。
 困っている人たちに何とかしたいという気持ちは、欧米人に負けているとは思わない。
 しかし、特定の児童施設などにわざわざ送ったり届けたりするとなると、募金箱などにお金を入れたり、寄附集めに来た人に渡すのとは、手間のかかりようが違う。かなりの強い気持ちがなければ、そこまではしない。
 しかも、匿名である。
 キャラクター名などを名乗るのを面白がる人もいるかも知れないが、少なくとも、名誉心に駆られてという動機はない。義理やお付き合いでするという動機もない。
 純粋に、相手の役に立ちたいという気持ちであろう。
 そう見てくれば、これは、個々人の自発的な動機に基づいて行われる個人寄附の原点に位置するものといえよう。それが、これまでの仕掛けを超えて、自然発生的に、全国各地で多発したことが目新しい現象なのであろう。
 匿名であることを問題にする必要はない。匿名で寄附したい人もたくさんいる。キャラクターの名前を借りるのも面白い。寄附への道は広いほどよい。
 教訓を酌むべきは、私たちのほうであろう。
 寄附を受けてより良いサービスを提供すべき機関は、数知れずある。公益法人もすべてそうである。
 日本の公共機関は、市民の善意を引き出し、受け止める努力をしてきたであろうか。それをしているのは、寺院と学校くらいではなかろうか。
 「日本には寄附文化が育っていない」などと決めつける前に、働き掛けなければならない。タイガーマスク寄附に、これだけの伝播力があるのである。経営の苦しい病院や文化団体は、工夫しておられるだろうか。
 個人寄附は、特定大企業の寄附やお金持ちの遺贈に比べて、一般に額は少ないであろう。しかし、その寄附には、熱い応援の気持ちが込められている。その気持ちがどれだけ寄附を受けた人たちを励ますことか。また、寄附を知った人たちにどれだけ社会への信頼感をもたらすことか。それらの効果は、額よりはるかに大きい。
 そういう気持ちをもっと引き出せという大きな宿題を、私たちは頂戴した。

全国公益法人協会発行「月刊公益法人」Vol.42/2011年2月号掲載
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