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定期連載 辛口時評
更新日:2006年12月20日
福祉現場に悲鳴満ち
  小泉純一郎前総理は、在任中は消費税増税はしないと公約し、それは、徹底的に歳出削減をしてからするものだと述べた。私を含めて、多くの国民はその考え方に賛成であった。
  彼は、聖域なしに歳出に切り込んでいけば、やがて国民は音を上げ、消費税増税に賛成するであろうという趣旨の見通しを、公言していた。
  現に、社会保障費についてもきびしい削減が続き、あちこちの現場で悲鳴が起きている。問題は、その悲鳴が、その人限り、その現場限りで終わってしまい、社会に響かず、政策や予算を扱う人々の耳に届かないことにある。そういう事態が続き、悪化の一途をたどっている。
  わずかな例外が、障害者自立支援法の自己負担問題と、医療リハビリの打ち切り問題であった。これらについては、応急措置は採られたが、その場しのぎにもならず、課題は残されたままである。
介護保険の現場をみれば、制度改正により、軽度者に対する従来のサービスが打ち切られた。その打ち切り方が乱暴で、必要なフォローがなされず、不満がうっせきしている。費用の削減が先走って、人に目がいっていないのである。
  先が案じられるのが、介護関係の職員の確保である。
  国が定める介護関係の報酬があまりに安いから、施設であろうと在宅サービスであろうと、職員に対する報酬は、まともとはいえない。夜間勤務を含めて手取り月10万というレベルでは、自立も困難である。しかも、昇給が見込めない構造になっているから、結婚の夢、子どもを持つ未来の夢すら諦めるほかない。それでは、せっかく「人に役立つ仕事をしたい」との志を育て始めた若者たちも、ためらわざるを得ない。
  一般企業における賃金も、いまだに厳しいようであるが、これは、それぞれの努力と経済環境の好転によって、希望を持つことができる性質のものである。ところが、介護などの収入については、希望を持てるような環境は生まれていない。
  気がつけば、人を支える分野に支える人がおらず、その養成もままならない事態になっていたなどという、悲惨な社会に堕(お)ちてしまわないよう、早急に手を打たなければならない。
  結局お金の問題であるから、消費税増税の理解をどう得るかに帰結するのであろうが、その前に、たとえば今回の道路特定財源の一般化問題について、なぜ「道路より人が先だ」という声が起きないのか、不思議でならない。
  小泉前総理が予定した国民の悲鳴は、すでに福祉の現場に満ちている。それを敏感に聞き取り、何よりも優先して対応策をとってこそ、その国は、人に優しい、美しい国になり、人が安心して住める、文化国家の仲間入りができるのであろう。
  障害者がデモしたから少し対応しておこうというような政治は、人間性も先見性も愛国心もない政治である。(了)
(神奈川新聞「辛口時評」2006年12月18日掲載)
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